Asruce=Tomormani=F ♭ 01

 

 

ここも、もう、ダメですか…

 

 

仕方ありませんよ、アスラ様。

 

あの宗教団体は、人を救って…いるんですから。

 

誰かがやらなければいけないんです。

 

私は…

この国を治める立場に、居ます。

 

  もう、現王も長く…ありません。

長らく国々が国が分裂していること―

どうにかまとめられないか。苦心していた。

 

現王は…父は。父は、優しすぎたんです。

あんなになってまで…。

私は、私は…… 今の今まで……何も………

 

 

 

アスラ様…

 

こうして、原因がわかった以上。

私は、全力を尽くします。

 

私たちの学び舎で起こった数々の奇妙な事件。

そして…魔導世界立魔法学園が“ああ”なってしまったのも。

  原因はわからなくとも。真相が闇の中であろうと。

 

  あの忌々しい宗教団体が

  何らかの形で関わっていたに…違いないんです。

 

 

……

 

 

 

 

 

ねえ、アリスさん。

 

本当は…一体何が、誰が、悪いんでしょうね。

何が原因だったのでしょう。何がいけなかったのでしょう。

 

  私…少し、わからないんです。

いつの間にか、シオネさんも

ユウクさんもコーヤさんも居なくなってしまった。

 

エピュウさんは…あの事件で…あんな…

それこそ化け物ような姿になって…なって…しまって……。

 

  ── 皆さんのことを信じていないわけではないんです…!

彼らは学園を、全てを守ろうとして下さったに違いないんです。

人間とは形容し難い、魔物のような相様に…あんな姿になってまで、

恐ろしい脅威から、私を逃してくれたエピュウさんのように。

 

今学園の中がどうなっているのか、私には確かめようもありませんし、

当時の方々がどうしているかなんて…今の私には…。

  もっと、力があれば…力さえあれば……。

 

  今の私に出来るのは、

  こうして、人々や精霊に声を掛けていくだけ…なんて。

 

 

… ご立派です。

 

私は、当時。魔法学園を護る守護者の一人でした。

陰の存在として、国へ仕えていたのです。

その頃から、アスラ様の事も…よく存じ上げておりました。

── 私には、学園が崩壊した時…何も出来ませんでした。

脅威が迫りつつあるのも理解っていながら、

自らの責務に追われ、同志と話しあう事も出来ていなかった。

 

同志たちの消息すら、掴めない。

ずっと過去の自分を悔いております。今も…迷っております。

  守護者としての力がありながら…何も、何も出来なかったのです。

同志たちが…彼らが、

何を考えているのか…何を考えていたのか

せめて理解出来てさえいれば。

 

また、また…昔のように、話したかった。

共に、過ごしたい…だけ、なのかもしれませんね。

 

  … 彼らが一体どこへ行ったのか…

  アスラ様なら、きっとおわかりになると想ったのですが…

 

 

ごめんなさい、アリスさん…。

 

こういう立場に戻ってしまった以上、

例えば…誰かのことを探したり……

無断で外出したりすることは出来なくなってしまったんです。

基本的に、王宮に閉じ込められているような生活を送る毎日…。

父達や連盟、国が決めた規律は絶対ですし、公務もある。

 

弟達や王位を狙う輩に

少しでも変な動きをしたことが知られれば…それこそ……。

 

  ですから、学園に居た時より…

  私は新しい情報に疎いのかもしれません…。

  父だって…父も…きっと……それで……。

 

 

いえ…。

 

アスラ様は、よくやっていらっしゃいます。

 

 

せめて、かの宗教団体が一体どんなモノなのか。

どんな力を使っているのか。

 

一体誰が関わり、動かしているのか。

もっと詳しい情報さえ理解れば……。

 

 

……

 

 

アリスさん、どうしました?

 

 

恐れながら、アスラ様。

 

なんですか、アリス魔法兵中佐。

 

どうぞ―

遠慮なくおっしゃってください。

 

 

私が、行きます。

 

 

なんですって…?

 

 

危険は承知の上です。

 

 

確かに貴方なら、適任です。

 

しかし…

 

もちろん、フチュタクフト王家第一王子御傍付としての…

王太子アスラ様のお役に立ちたい気持ちも御座います。

 

が、私は…

どうしても行かねばならない理由があるのです。

 

 

残りの、守護者。ですか。

 

はい。

 

幼少から共に過ごしてきた仲間である、

残り 3人の守護者。

 

  どうしても、気がかりなのです。

  私は、彼らを見つけ出したい。

未知数の場所へ赴くわけですし…

このように想っている私が…

今も過去に囚われ、逡巡している愚者の私が。

 

どうなってしまうかわからない以上… 

何か監視をつけて頂いても構いません。

 

── 分かりました。

では…どうか、お願いします。

 

私も石橋をなるべくなら叩きたい立場であり、性分なので…

気は引けますが、これも世界の為…この魔法石を、貴方に。

 

 

これは…召喚石。

 

この石を通して、神聖動物に物事が伝わります。

私はその子とお話をすることが出来ますから。

 

何かあった時も呼んであげてください。

私が…一番可愛がっている子です。

 

  必ず、無事に…帰ってきてくださいね。

 

 

御意に御座います。

 

―御心、痛み入ります。

 必ずや 意に…添い遂げたく。



出来る範囲で、いいんですから、ね。

 

 

 

はい…。

 

では、行って参ります。

 

 

 

いってらっしゃい。アリスさん…。

 

どうか…お元気で……